柞の森の樹木たち その17 イタヤカエデ カエデ科
漢字表記 板屋楓

猛暑の夏も去り、前回のヤブツバキ編から半年が過ぎてしまいました。ぼんぼりに行く度に判明する樹種が増えているのにもかかわらず、報告は半年に1回のペースになっています。今回はカエデ類に焦点を当てました。カエデ属は、世界におよそ200種あるといわれます。うち、中国に約100種が分布するとされていて、日本には従来26種とされていましたが2000年にアマミカジカエデが新種発見されたことから現在27種となっています。

国土面積に比べてカエデ類が多く、ヨーロッパや北米には10種程度となっています。この種類の多さが日本の秋の紅葉を美しいものにしています。 今年もぼんぼりのカエデ類は錦秋の秋を彩る主役になるでしょう。その秋にせかされるようにカエデ類についてまとめました。

1.ぼんぼりのカエデ類
ぼんぼりのカエデ類で同定できたものは次の6種です。(写真①~⑥)
①イトマキイタヤ ②ウラゲエンコウカエデ ③エンコウカエデ  ④コハウチワカエデ 
⑤イロハモミジ ⑥ウリカエデ ここまで分かるのに2カ月もかかってしまいました。
これらは、柞の森の高中層木の中に①②③⑤があり、人工林の中下層木の中に④⑥があります。
イトマキイイタヤとウラゲエンコウカエデは比較的大きな木があり柞の森の中で目立ちます(写真⑦~⑩)
このほかにもミツデカエデ、ウリハダカエデ、オオモミジ、オニイタヤ、カジカエデ、チドリノキがあってもおかしくない地域ですのでカエデ探索の道は長いようです。
写真①イトマキイタヤ.jpg写真①イトマキイタヤ写真②ウラゲエンコカエデ.jpg写真②ウラゲエンコカエデ写真③エンコウカエデ.jpg写真③エンコウカエデ写真④コハウチワカエデ2.jpg写真④コハウチワカエデ2

写真⑤イロハモミジ.jpg写真⑤イロハモミジ写真⑥ウリカエデ.jpg写真⑥ウリカエデ写真⑦イトマキイタヤの樹肌.jpg写真⑦イトマキイタヤの樹肌写真⑧イトマキイタヤの緑陰.jpg写真⑧イトマキイタヤの緑陰

写真⑨ウラゲエンコウカエデ樹幹.jpg写真⑨ウラゲエンコウカエデ樹幹写真⑩ウラゲエンコウカエデ緑陰.jpg写真⑩ウラゲエンコウカエデ緑陰

2.カエデとモミジ
「カエデ」は、カエデ科の樹木全般を指す言葉で、植物学の分類であり、葉がカエルの手に似ていることから「蛙手」が語源とされ、「楓」の漢字で表記されます。
「モミジ」は、漢字で「紅葉」と書くように、植物の葉が赤や黄色に紅葉する様を表し、中でもカエデ類が紅葉の美しさを代表していることからカエデ類をモミジと呼びます。
「モミジ」は揉(も)んで染め出す紅色「もみ」が語源で、動詞「もみづ」は紅葉することとされています。
名前はカエデが付くものとモミジが付くものがあり、イタヤカエデやエンコウカエデなど○○○カエデと呼ばれるものがほとんどです。モミジが付くものにイロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジ、ナンブコハモミジの4種があります。 葉の切れ込みが深いものにモミジの名前が付いるようで、この切れ込みの数と深さについては面白い話があります(後述)。一方、カエデも紅葉も付かないものにオガラバナ、メグスリノキ、ハナノキ、チドリノキがあります。

3.悩ましいカエデの同定
カエデ類は紅葉が美しく身近な植物ですが、この仲間は多様で、識別するのが難しいグループです。似通っているものがあると途端に迷ってしまいます。ぼんぼりでカエデ類の同定に取りかかってから約3カ月を要してしまいました。まず、高木が多く葉が取りにくいこと、葉で同定しますがその葉に変異が多いこと、生えている場所や葉の付いている場所で葉の形が微妙に違います。参考にする図鑑と葉の形や葉の切れ込みが違うといったん決めたものに疑問がわき自信がなくなってしまいます。そうなると、その他の特徴である鋸歯や毛の有無で判断ることになります。そして、その種の生育地域が文献と合っていればようやく種が同定されます。
例えば、今日の主役イタヤカエデの仲間はエンコウカエデを含めると7種、亜種が4種もあります。このうち、明らかに生息地域でないとして除外されるものが4種と亜種1種ですので悩みました。
今回も、オニイタヤとイトマキイタヤの区別が葉の形では出来ず、葉裏の主脈基部に毛がないことからイトマキイタヤとしましたが、いまひとつ自信がありません。もう一つのウラゲエンコウカエデは、葉の裏に毛が多いことからエンコウカエデと区別できました。

4.カエデ類の特徴
写真⑪イロハモミジ翼果.jpg写真⑪イロハモミジ翼果カエデ類の特徴は、①対生する葉を持つこと、②2つの翼(写真⑪)をもつことです。手のひら形の切れ込みがあることは共通の特徴ではありません。三出複葉のメグスリノキ、切れ込みのないチドリノキ、ヒトツバカエデもカエデの仲間であり、常緑樹のクスノハカエデもあっても必ず葉が対生です。果実は、形は様々ですが2つの翼を持つことが共通です。翼果は2個が向き合ってプロペラ状に付いて熟すと分かれて別々に落ちます。この翼果の形や角度は、種・亜種により変化があります。翼果が、クルクルと回転して落ちるのは、回ると滞空時間が長くなるので、風に乗り遠くまで飛ぶことが出来るからです。
翼果は1対になってプロペラのようになっていますが2個の種子が分離せず、対のままでは回転しないので分離して風に乗っているようです。

5.カエデの葉の形の違いは進化の過程(ラインナップ写真参照)
前述したように、カエデの仲間には切れ込みのない普通の葉、三出複葉、切れ込みのあるいわゆるモミジ葉と多様です。なぜだろうと不思議に思っていたところWEB上で下記のような見解を見つけましたので紹介します。
カエデ属の葉の原型は奇数羽状複葉であるといわれていて、カエデ属の進化に伴って奇数羽状複葉(ネグンドカエデ)⇒三出複葉(ミツデカエデ、メグスリノキ)⇒掌状に切れ込んだ単葉(イタヤカエデを含む多くのカエデ属)⇒切れ込みのない単葉(チドリノキ、ヒトツバカエデマルバカエデ)という進化が想定されるそうです。原型は鳥の羽根型の羽状複葉であったものが光条件や水分条件に左右されない生育場所を求めて普通の葉に近い形に進化したのでしょう。

6.イトマキイタヤ(イタヤカエデ)
写真⑫アカイタヤの花.jpg写真⑫アカイタヤの花写真⑬アカイタヤの翼果.jpg写真⑬アカイタヤの翼果イタヤカエデは板屋楓と書き、葉がよく茂り、板屋根のように雨を漏らさないということが語源となっています。葉が大きく、葉の縁に鋸歯のない全縁の葉が特徴です。秋には鮮やかな黄色に色づきます。今年のぼんぼりの紅葉で確かめてみてください。
イタヤカエデは新葉とともに黄緑色・淡黄色の小さな花を散房状・円錐花序につけます。(写真⑫⑬)
虫媒花ですから葉の展開とともに咲き、葉で虫が鳥から見つけにくくするとともに、新葉の色を赤味がかった黄緑色にして花と一緒に目立たせて虫たちに知らせているようです。花は小型で口吻の短いハエや小型のハナアブ、ハナバチの仲間が訪れています。
カエデ類は糖分を含む樹液を浸出することが知られており、国旗にもなっているカナダのサトウカエデが有名です。春先、樹液の活動が始まると樹幹の地上部の低いところに大きめの錐を使って孔を開け、パイプを挿入し、その下にバケツをつるして採液するようです。それを煮詰めると香り高いメープルシロップが出来ます。樹液は、糖のほか、アミノ酸やミネラルなどを含み栄養価が高いようです。
日本のカエデ属の中ではイタヤカエデの樹液糖分濃度が高く、しょ糖を含みシロップが生産されています。
材は重厚でやや加工が難しいが表面の艶が良く粘りがあるのでスキー板や楽器、工芸材に使われます。

7.カエデ類のラインナップ(写真A~I)
カエデ類には多くの仲間がありますが新緑、紅葉が美しく風流ですので、紅葉の名所は日本全国にあり、また、好んで庭園木、公園木として植えられています。このため、多くの園芸種が造られた結果200種とも300種ともいわれそれぞれ名前がつけられています。
ぼんぼり以外で今年写真に撮ることが出来たカエデ類をリストアップします。
このほか、エゾイタヤ、アカイタヤ、オニイタヤ、チドリノキなどはこれまで各地で現物を見ているのですが写真がありません。
写真Aヒトツバカエデ.jpg写真Aヒトツバカエデ写真Bウリハダカエデ.jpg写真Bウリハダカエデ写真Cウリハダカエデの翼果.jpg写真Cウリハダカエデの翼果写真Dウリハダカエデ樹肌.jpg写真Dウリハダカエデ樹肌

写真Eハナノキ.jpg写真Eハナノキ写真Fオオモミジと翼果.jpg写真Fオオモミジと翼果写真Gハウチワカエデ.jpg写真Gハウチワカエデ写真Hオオモミジ.jpg写真Hオオモミジ

写真Iメグスリノキ.jpg写真Iメグスリノキ写真⑭黄葉のぼんぼりウラゲエンコウカエデ.jpg写真⑭黄葉のぼんぼりウラゲエンコウカエデ写真⑮秋のウラゲエンコウカエデ.jpg写真⑮秋のウラゲエンコウカエデ

8.ぼんぼりのカエデの紅葉風景(写真⑭⑮)
もうすぐ紅葉の季節がきます。ぼんぼりの紅葉の最盛期は11月中旬ごろです。今年はどんな色づきを見せてくれるでしょうか。樹木の葉っぱが紅葉するのにも実は樹木の知恵が働いています。そのメカニズムなどのついては次回に譲ります。

柞の森の樹木たち その16 ヤブツバキ ツバキ科
漢字表記 藪椿

1.今年は花が咲いた
前回の会長の活動報告で「柞の森にツバキの花が咲いた、伐採の効果か?」とありました。
この森で抜き切りを初めてから3年目であり、変化があっても肯けるのですが、ツバキは伐採の場所からかなり離れているので半信半疑でした。それを確かめるべく、3月16日の活動日、現場に行ってみました。基地に行く途中、ウグイスののどかな「ホ~ホケキョ」の声を何度も聞きました。今年のウグイスの初聞きは右の耳で春の歓喜の声をいただきました。約2ヶ月ぶりに訪れた柞の森はコナラや,アブラチャンの芽吹きが始まり(写真①②)、林床にはアケボノスミレやエイザンスミレ(写真③④)の花が咲いて春の兆しがいっぱいでした。
①コナラの芽吹き.jpg①コナラの芽吹き②アブラチャンの芽吹き.jpg②アブラチャンの芽吹き③アケボノスミレ.jpg③アケボノスミレ④エイザンスミレ.jpg④エイザンスミレ

⑤厚いヤブツバキの葉の下で艶っぽく咲く赤い椿の花.jpg⑤厚いヤブツバキの葉の下で艶っぽく咲く赤い椿の花⑥今年の伐採で明るくなった柞の森 ヤブツバキはこの左斜め奥にある.jpg⑥今年の伐採で明るくなった柞の森 ヤブツバキはこの左斜め奥にある柞の森のツバキ(ヤブツバキ)は右尾根上部岩場付近に数本生えている。なるほど、ほとんどのヤブツバキに2~5個の花が付いていて、厚い緑の葉っぱの中でまるで赤いドレスを着た妖艶で気品あふれるバーのマダムのように見えました(写真⑤)。                              
この周辺は伐採しておらず直接的に日当たりがよくなったとは言えないが去年の伐採で斜面下方の高木が伐採されたことで斜めから差し込む光の量にわずかとは言え変化があり、それにヤブツバキ達が敏感に反応したと思われます。これまで花を見なかった樹に花が咲いたのであるから林内環境の改善がもたらした開花と思われます(写真⑥)。「赤い貴婦人」蘇るとでもいいましょうか。

2.暖帯林の代表樹種で鑑賞用に多数の品種改良種で親しまれる木
ヤブツバキは暖帯林の代表的な広葉樹小高木で、樹高は10~15m、直径は20cmぐらいまで成長する。大きいものは20m、40cm近くになります。ヤブツバキは学名のCamelia japonicaが示すように日本原産 です。暖帯の照葉樹ですが耐寒性が強く、本州では太平洋側を北上して青森県東津軽郡平内町が北限となっています。ユキツバキは積雪地方の生育に適応するよう幹や枝をしなやかにして、ぼう芽性も高くして樹高が低い潅木状に樹形を変えたヤブツバキの変種と言われています。私が勤務した屋久島には赤い小ぶりのリンゴのような実をつけるヤブツバキの変種リンゴツバキがありました。このほか室町時代からと言われる肥後椿、侘助などの園芸種が500種以上あって日本の文化・民俗に影響が強い樹種です。ヤブツバキは成長が遅く700~800年も生きる寿命の長い木で、古来は神聖で霊力を持つとされており、古事記や日本書紀にも「都波岐」として登場します。
葉が厚く艶やかで、名の由来が厚葉樹(あつばき) 艶葉樹(つやばき)からきていることが肯けます(写真⑦)。樹肌も灰白色でつるつるしています(写真⑧)。
⑦よく発達したクチクラ層を持つヤブツバキの葉.jpg⑦よく発達したクチクラ層を持つヤブツバキの葉⑧灰白色の木肌も艶っぽい.jpg⑧灰白色の木肌も艶っぽい⑨落椿.jpg⑨落椿

花はご存知の通り赤ですが艶やかさがあるので「椿の赤」と表現したいくらいです。2月から4月に咲き、長いものでは前の年の10月ごろから5月まで長い期間花をつけます。椿の赤い花の一輪は百花の桜より人を引き付ける魅力があります。花言葉は「理想の愛」「謙遜」だそうです。花弁の基部が癒着しているため落花のとき花弁とおしべが一緒に落ちるので「落椿」と呼ばれています。(写真⑨)

3.ヤブツバキの花の戦略
⑩ヤブツバキに訪れたメジロ(Yahooイメージより).jpg⑩ヤブツバキに訪れたメジロ(Yahooイメージより)ヤブツバキの花の頃愛らしいメジロが蜜を吸うために訪れているのをよく見かけます。まさに赤い花を渡り歩くみどり色のメジロ、鳥の鳴き声が聞こえる日本の春の里山風景です。ヤブツバキは鳥媒花です。訪れる主な鳥はメジロ、ヒヨドリです。花弁の底に蜜があってくちばしが筆状になったメジロやヒヨドリの大好物です。彼らの主食は木の実や虫なので冬の食料の少ないときの貴重な栄養源として副食的に摂っていると思われます。ヤブツバキはメジロの居酒屋的存在かも…。 彼らが蜜を吸うとき花粉が媒介され他家受粉を助けます。くちばしの周りに黄色い花粉を付けたメジロをよく見かけます(写真10)。

それでは、ヤブツバキはどのようにしてメジロやヒヨドリを利用するための戦略を持っているのでしょうか。 
その1 緑の厚い葉の中で赤い花を目立たせている。
その2 筒状の花弁の底にたくさんの蜜を貯めておりしっかりした「がく」で守っている。
その3 えさの少ない時期に花を咲かせ、鳥を呼び寄せ花粉を媒介させている。
その4 花はラッパ状で正面からくちばしを入れてしか蜜がすえないようにしているので花粉が必ず付着するようにしている。
その5 比較的大きく花弁がくっついた花を下向きに咲かせメジロが花に止まって蜜を吸いやすいようにしている。

このようにヤブツバキとメジロは相互利益の関係で強固に結ばれています。

4.良質木炭の材料
直立しやすく枝葉をよく茂らせるので花もさることながら樹形がよく庭木や公園木として重宝がられます。(写真⑪)
ヤブツバキの材は堅く緻密で、ツゲと同じような使われ方をして印鑑・櫛・ロクロ細工・ソロバン玉などですが木炭にしても良質です。私も子供の頃ヤブツバキだけで焼いた炭を見たことがありますが、丸くて硬くて黒光りのする品のよい炭でした。昔は大名の手あぶり用に重宝されたようです。
⑪公園木のヤブツバキ.jpg⑪公園木のヤブツバキ⑫ヤブツバキの実.jpg⑫ヤブツバキの実⑬ヤブツバキの実.jpg⑬ヤブツバキの実

5.種子から良質の椿油
ツバキの種子は写真のように比較的大きな実で中に2、3個の硬い実が入っています(写真⑫⑬)。この実には40%程度の油脂分が含まれていてこれが椿油で極めて優良な植物油となります。椿油は、オレイン酸の含有量が多く動脈硬化の予防になるそうでオリーブ油と並ぶ良質な食用油となります。これで天ぷらを揚げるとカラッとした揚げ物が出来るので最近、高級料理店や健康志向の家庭でも脚光を浴びています。椿油はこのほか頭髪用、医薬用、機械用など広く利用されています。[写真⑫⑬「桜島の椿油」http://www.sakurajima.gr.jp/tsubaki/about/post-14.htmlより拝借]

椿油の製法は、種子を水洗い天日干して粉砕後、搾油機で40tの圧力で絞り沈殿させろ過させて黄金色の椿油が出来ます。手作りでは難しそうです。ぼんぼりでやろうとしたら次の方法が比較的簡単ですので紹介します。
サトウ椿株式会社さん(http://www.sato-tsubaki.co.jp/index.shtml)のQ&Aにありました。
 1. 乾燥させた椿の種を平たい鍋(鉄板)で炒る。
 2. 炒った実を石うすで細かくつく (くだく)。
 3. それを大釜に入れ、水を足して炊く。すると、油分が浮いてくるのでそれをすくう。(できるだけ水分が入らないように慎重にすくう。)
 4. すくった油分だけをまた鍋に入れて炊く(煎じる)。すると、水分が飛んでいき、最後に油になる。
椿油が完成するまで5時間ほどかかり、うまくすれば10kgの種から1升半ほどの椿油(粗油)が採れるそうです。なお、この方法で得られた粗油は、和紙(なければコーヒーフィルター等)でろ過すれば澄明な原油になります。

6.ヤブツバキにまつわる思い出
⑭花蜜を吸う.jpg⑭花蜜を吸う①蜜どろぼう
ヤブツバキの花蜜はひとつの花にかなりの量があります。花を摘み「がく」のところで離しラッパ状の口から「スー」と吸い込みます(写真⑭)。それほど甘いとは言えませんがほのかな独特の香りのある花蜜を吸うことが出来ます。子供のころ今の時期の学校帰りや遊びの中でよく味わいました。空腹は満たされませんでしたが元気は出ました。花粉を媒介せずに蜜だけ頂戴していました。

②椿山  天然記念物に?
九州熊本の故郷の山にほとんどがヤブツバキの国有林があって集落の人々は「椿山」と呼んでいました。直径が10cm~20cmで樹高は10mぐらいでしたでしょうか。かなりの集団でヤブツバキの純林と言ってもいいくらいでした。そのうち、この山で炭が焼かれて跡地は人工林になりました。そのまま残っていれば下北半島の天然記念物のようになっていたかも…。
柞の山にもヤブツバキが比較的多い個所があるので椿山を造ってみませんか。

③メジロ捕り
メジロ捕りは、メジロの愛玩目的の捕獲や飼育が2012年4月から法律で完全に禁止され、今はできませんが、私が小学生のころの遊びにメジロ捕りがありました。捕獲したメジロは自分で面倒見て親友といえるほど可愛がっていました。
そのメジロ捕りの様子を思い出してイラストにしてみました。

イラスト メジロ.jpg親友であるオトリメジロを篭にいれて風呂敷に包み裏山行き、口笛でメジロの鳴きまねをする(その当時の山の子供は誰でもでき、オスとメスの鳴き声の区別もできた)と山のメジロが応え付近に棲るのががわかる。適当な枝にオトリメジロの篭を架け、ヤブツバキの花(蜜を入れて)を結わえた枝にトリモチ(自家製)を塗って篭に挿しておき10mぐらい離れたところの藪陰から固唾をのんで見ている。口笛でメジロのまねをすると、いつも口笛で言葉を交わしあっている親友メジロは盛んに応えてくれる。やがて山のメジロがそれに呼応するように遠くから入り込んできて、しばらくすると「チュ、チュ、チュ」と笹鳴きして篭のそばに寄ってくる。そうするとオトリのメジロは静かになる。山のメジロは警戒しながらメジロ篭の周りに寄ってきて覗きこんだりしている。仕掛けたトリモチに近づいたり離れたり、この時の私たちの心臓は「バクバク」である。あのときのドキドキ感をもう一度味わいたいのだが、今でもバクバクするだろうか?

山のメジロがヤブツバキの花蜜の誘惑に負けたのか親友メジロの魅力に負けたのかトリモチの枝に止まると、メジロはブラーッと下にさがってバタバタする。「かかったー!」と藪から飛び出しメジロを捕まえる。トリモチを使う方法と、二段になった篭の上の段の落とし篭に、ヤブツバキやミカン等を入れて誘い込み、山メジロが中に入ると蓋がしまる仕掛けもあってこれの方が取れたメジロがトリモチで汚れない利点があった。捕れたメジロはオスだけを何匹かは自分でしばらく養い優秀なものを見分けて劣るものやメスは逃がしましたので決して乱獲ではありませんでした。


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柞の森の樹木たち その15 アカメガシワ トウダイグサ科
別名 ヒサギ(久木) ゴサイバ(五菜葉) サイモリバ(菜盛葉)
漢字表記 赤芽柏

1.パイオニア樹種で陽樹
9月16日の活動日に、ハイキング道沿線の修景伐採箇所の樹種を調査したとき上層木に混じって生育しているアカメガシワを数本見ました。はじめは、これほど大きくなったアカメガシワを見るのは珍しいので何の木かと思いましたが紛れもないアカメガシワでした。

① ハイキング路の尾根筋のアカメガシワ.jpg①ハイキング路の尾根筋のアカメガシワアカメガシワはパイオニア樹種の代表格で伐採跡地や山火事跡地にいち早く出現して早期の林分を優先しますが後発の樹木が侵入してある程度の林齢になると他の樹木に被圧されたり除伐されたりするので林の中にこれほど大きくなるまで残るのは稀です。 典型的な陽樹であり、この付近ではどこでも見られ柞の森の広葉樹伐採箇所にも早速出現しています。大きくなったものは太陽の光を十分に受けられる環境にある単木的なもので林の中にあるのは比較的珍しい状態です。
ここの場合、尾根筋で地味が悪く植栽したスギ、ヒノキの生育や他の樹木の生育も悪かったため生き残り上層を構成する樹木として残ったのでしょう。(写真①②)

2.アカメガシワの技
アカメガシワはパイオニア樹種ですから、戦略を駆使して自分が生きていく環境を他の植物に先んじて確保する必要があります。先駆樹種としての優れた技があるのです。
(1)新芽を守る技
アカメガシワは別名をヒサギ(緋木)といって新芽が赤いのが特徴でありこれが名前の由来になっています。芽が赤いのは表面にある星状毛が赤② 大木になると細かい葉がビッシリ.jpg②大木になると細かい葉がビッシリいためで、その下は緑色ですので葉が大きくなり毛の間隔が広くなったり毛が脱落したりすると緑色になります。赤芽なのは新芽の時だけなのです。毛があると虫なども食べにくく、この赤い毛が幼い新芽が無事に成長して光合成ができるようになるように守っているのでしょう。ここにもパイオニア樹種の戦略があるようです。(写真③)
(2)広い葉と自在な葉柄を持つ技
前回のクサギと同じように葉が大きく(20cmにおよぶものもある)、葉柄の長短(5~20cm)で葉が重ならないようにして太陽の光をいっぱい受けて他の樹種より早く成長します。(クサギ編4参照)
葉柄が長いことの利点として意外なことがあります。
それは、葉柄が長いことで少しの風でも葉が揺れるということです。
葉は裏面に1mm2当たり300程の気孔から二酸化炭素を吸収して光合成を行うので葉の裏のCO2濃度が低くなって光合成の効率が落ちます。そこで葉を揺らし空気を入れ替える技を使っているのです。長い葉柄で光を無駄なく受け、Co2もたくさん取り込んでエネルギーをフル生産し林の空間を占有する技です。(写真④⑤⑥)
③ 新芽が赤い.jpg③新芽が赤い④ 長い葉柄.jpg④長い葉柄⑤ 葉柄の長さの違い.jpg⑤葉柄の長さの違い⑥ 葉が重ならないように葉柄の長さが違う.jpg⑥葉が重ならないように葉柄の長さが違う
(3)ARISOK(アリソック)に守らせる技
アカメガシワの葉には蜜線があります。蜜腺は花にあって蝶や蜂などの昆虫を蜜で呼び寄せて受粉をさせるのが一般的ですがアカメガシワは葉に蜜腺(花外蜜線)を持っています。蜜腺は葉の基部に一対はっきり判るものがあるほか葉の縁にも点々とあります。
この蜜腺は何のためにあるのでしょう。
若葉の頃、これに多くのアリが蜜を吸うために集まっているのが見られます。実は、アリを呼び寄せて蝶や蛾の幼虫に食害されないようにパトロールさせているといわれています。この蜜腺は、若い木や幼い葉で発達し、大きく育った木や成熟した葉ではあまり発達していません。旺盛な成長をする源となる光合成工場である大切な葉のうち脆弱で虫にとってもおいしい小さな木や若い葉を守り、成熟した大きな木や古い葉は組織がしっかりしているため守らなくても大丈夫との戦略なのでしょう。ARISOKとセキュリティーの代金を蜜で支払う契約になっているのでしょうか。とにかく葉や枝を防衛して早く大きくなるためのあらゆる技を使っているといえます。(写真⑦)
(4)根ぼう芽の技
根のぼう芽力が強く、日当たりがよければ何度伐っても芽を出してきます。根に大きな葉で作ったエネルギーを蓄え、光を求めて新たな芽を展開しょうとします。石垣やコンクリートの割れ目でもよく見かけるのはこの生命力があるからです。
(5)種子の技
アカメガシワは早生・早熟で早く種子をつけます。それを鳥に運ばせ、その種子は何十年も土中で眠り、伐採や山火事などの撹乱で光が当たる環境になり地中温度(35℃ぐらい)が継続して上昇すると発芽します。種子はそのまま蒔いても発芽率は低いのですが表面に油脂があり長い休眠に耐えられるようになっています。アカメガシワの種子は一説には20年ともいわれる長期間休眠できる装備で伐採や山林火災などの撹乱を待っているのです。種子の表面の油脂は鳥にとって栄養価の高い食べ物となりますので鳥は好んで食べます。それが子孫を繁殖させる技ともなっています。
(6)花の技
花の色は目立たないけど突起がたくさんあって虫が止まりやすい形をしていて確実に受粉させて沢山の実をつけるように出来ています(写真⑧)。 
⑦ 蜜腺とアリ.jpg⑦蜜腺とアリ⑧ アカメガシワの花.jpg⑧アカメガシワの花⑨ アカメガシワを使ったカシワダゴ.jpg⑨アカメガシワを使ったカシワダゴ⑩ 葉柄を使って縛る.jpg⑩葉柄を使って縛る
3.炊葉(カシキハ)
アカメガシワの早期生長戦略の産物である広く大きな葉や葉柄が人間生活に役に立っています。
いや、人間がこれをうまく使っているといっていいでしょう。
それは、木の葉を食器や食べ物を包むために使っていることです。カシワやホオノキをカシキハ(炊葉)と呼びそれがカシワの語源になっています。カシワの名がついているのは柏のように葉がおおきくなるということですがアカメガシワに五菜葉(ゴサイバ)、菜盛葉(サイモリバ)の別名があるのはそのためです。
葉に食物を盛ったり食べ物を煮たり焼いたりするのに使う場合
①毒がない(薬になる)②大きい・広い③香りがある(嫌な臭いがつかない④殺菌作用がある⑤毛がない(表面が平滑)⑥乾燥させてもばらばらにならずにしなやかであることが必要ですが、アカメガシワはこれらの条件を満たし上にもうひとつ葉柄が長いという利点があります。この葉柄を使って食物を包む紐の代わりに使うことが出来ます。
その例としてわがふるさとで作るカシワダゴ(ダンゴ)を紹介します。カシワダゴはお盆に作る郷土菓子です。
アカメガシワの葉の大きいものを採って軒先で陰干ししておきます。
米粉を練ってピンポン玉より少し小さいぐらいの大きさに丸めて水で戻したアカメガシワに包み10個程度をまとめて縛り、蒸し器で蒸します。その姿を再現したのが写真です(写真⑨)。
葉柄をうまく使って縛ってあるのが分かるでしょうか(写真⑩)。蒸しあがった団子は砂糖や黄な粉をたっぷりつけて食べます。葉に包まれていますのでちょっとべたつく団子も手を汚さずに食べられます。アカメガシワの独特な香りの風味のするとてもおいしい団子でした。これを竹かごに入れて風通しのいいところにつるすと3日ぐらいは保存できます。お盆の頃の懐かしい食べ物ですが最近はふるさとでも作っていないようです。復活したら古くて新しい名物になるような気がするのですが今の人の味覚に合うでしょうか?

4.山菜・薬草
アカメガシワは、若い葉の天ぷら、木の芽あえとして食べることが出来ます。また、薬草茶としても使えるようで、薬効は胃潰瘍、胃酸過多、胆石症などです。季節は秋、樹木はこれからエネルギーを根や幹に蓄え、冬芽をつくり越冬準備に入ります。来春の芽吹きや葉の展開を樹木の技としてみると愛おしく見ることが出来るのではないでしょうか。

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柞の森の樹木たち その14 クサギ シソ科(クマツヅラ科) クサギ属
別名 クサギナ
漢字表記 臭木(臭木菜)

①伐採跡のパイオニアたち.jpg①伐採跡のパイオニアたち1.パイオニア樹種代表のクサギ
前回のモウソウチクを書いたのが2月の下旬でしたので本当に久しぶりの登場となります。

この間、仕事の関係で「ぼんぼり」もお休みさせていただきました。本人曰く「戦力外」と勝手に自己宣告しての長期離脱でした。仕事の方も一段落して、8月の活動から「ぼんぼり」復帰となり、このコーナーも復活となります。
このコーナーは、現場である「ぼんぼり」を訪れなければ書く気が起こりません。材料になる樹種の写真等は撮り貯めしてありますがやはり現場で書く気になる樹種を決めることになります。森の中を見て回り、「今度は私を書いて・・・」と語りかけてくる樹種を探します。

前置きが長くなりましたが、久しぶりに「柞の森」を歩いて、広葉樹を伐採した跡のパイオニア樹種たちが旺盛に繁茂しているのが印象的でした。写真①

②鋭いとげのジャケツイバラ.jpg②鋭いとげのジャケツイバラそれらの樹種は、アカメガシワ、ネムノキ、ヌルデ、カラスザンショウ、クサギで、このコーナーの番外編2、眠りから覚めたパイオニアとして一度登場させました。その中に新顔がありましたなぜかキリノキが一本生えていました。また、昨年は少数派だったジャケツイバラが増えていて鋭いとげで歩行を邪魔して「俺を書け」と訴えていました。写真②
そのそばで特に旺盛に生長していたのが今回登場させる「クサギ」です写真③。 

2.臭い木でも山菜です。
クサギはシソ科の落葉小高木です。従来はクマツヅラ科に分類されていましたが現在ではシソ科に分類されているようですが多くの図鑑はまだクマツヅラ科の方が多いみたいです。クサギは、その名のとおり葉っぱや茎からやや強烈な異臭がします。葉っぱを取って鼻に近付けるだけで分かる樹木の代表です。この臭い、初めての人には嫌なにおいですが、慣れるとそれほどではありません。私はこの臭いが好きで、クサギを見つけると葉っぱをむしって嗅ぎます。この臭いにふるさとや祖母を思い出すのです。

③クサギ.jpg③クサギ別名をクサギナ(臭木菜)といい私の故郷もこの名で呼んで葉を食用にしていました。生の取り立ては臭いますが、しばらくたつと衰え、茹でると臭気が消え、味噌汁や佃煮、天ぷらにして食べるとおいしいれっきとした山菜です。静岡以西で食されていて岡山県吉備地方にはクサギ菜のかけ飯という郷土料理があるほどです。 私が子供のころは祖母が春先に焼畑から若葉を取ってきて佃煮や煮付けにしていました。大人はこれを焼酎の肴にしておいしそうに食べていましたが子供には決しておいしいものでなくこれが弁当のおかずに入っていると嫌でしたが他に食べるものがなくしかたなく食べていました。保存食にもなるようで、おかずがないときこれがよく入っていました。

3.クサギ虫は疳の薬
クサギで思い出すのがこの木に入っている虫の幼虫(ウジ)が子供の「疳(カン)の虫」薬として焼いて食べさせていたことです。「疳の虫」は子供の夜泣きがひどかったり、理由もなく不機嫌になったり欲求不満を起こす神経異常興奮のことで昔は体の中にいる悪い虫「疳の虫」のせいといわれていました。クサギは柔らかい木ですので穿孔性の虫が食害しやすいようです。これを夜泣きや疳がひどい子に炙って食べさせます。コウモリガ成虫.jpgコウモリガ成虫コウモリガの幼虫.jpgコウモリガの幼虫たんぱく質が豊富ですので栄養補給になったのでしょう。今で言えば○○救命丸でしょうか。何の幼虫か調べてみましたらどうも穿孔虫「コウモリガ」の幼虫のようです。
また、葉や小枝はリューマチや高血圧、腫れや痔の薬になるようです。材木としてはあまり役に立たない木ですがこのように人の役に立つ木です。

4.クサギの戦略
クサギはパイオニア樹種の代表的な樹種です。ですから、葉っぱが大きく葉柄も長く30cmに及ぶものもあります。
葉柄は長いのと短いものが巧妙にお互いに重ならないようになっています写真④⑤。
花はちょうど今頃の8月ごろ、色は白で地味ですがガクが赤く目立つように咲き、カラスアゲハチョウなどが蜜を吸っているのをよく見かけます。写真⑥⑦
④クサギの葉のつき方.jpg④クサギの葉のつき方⑤クサギの葉のつき方.jpg⑤クサギの葉のつき方⑥クサギの花.jpg⑥クサギの花⑦クサギの花.jpg⑦クサギの花

果実は秋に熟し、紺色の液果の周りに赤いガクが配置されていわゆる2色効果を鳥にアピールして遠方まで運ばれて伐採跡地などで発芽する戦略をとっています。この実は、草木染に使われ媒染体なしで空色に染めることが出来ます。葉は対生で、写真のように2列対生となっているのが特徴です。これもパイオニア樹種として太陽の光をたくさん受けて光合成を旺盛に行って早く生長するための戦略です。また、クサギは根が地表面に出ると茎を出す性質があり刈り取られてもすぐに再生します。このようにどんなところにも生育できてしぶとい見かけによらず強い木です。

5.盛夏の樹木
樹木は春、前年に光合成で蓄積した樹体内のエネルギーを使って発芽や枝葉の展開、根の伸長を行って肥大生長を行います。展開した葉で作られるエネルギーも蓄積せずすぐに成長に使うため7月中旬までは樹体内のエネルギーは極めて低い状態です。

盛夏期、高温と乾燥が続くと地上部の上長成長はほとんど止まり、この時期から枝は伸びません。しかし、光合成は盛んに行われ、そのエネルギーは高温状態で生活することによる消耗を補い、幹や根の成長に向けられます。今の時期、樹木は冬の耐寒性を高め、翌春の発芽に向けてエネルギーを蓄積するとともに根を充実させているのです。また、この時期から冬芽を形成して翌春の発芽に備えます。この時期に枝を切ると冬芽が開いて2回目の成長をします。これが土用芽といわれるものです。

樹木の手入れや森林作業はこの樹体内エネルギーとの関係や腐朽菌の繁殖条件を利用して行われます。剪定(枝打)や移植を5月下旬~7月に行うと樹体内のエネルギーが最も低い時期ですので、再び十分な枝葉の展開と発根を行うエネルギーが不足し、樹勢が衰退します。剪定や移植の最適期は2月下旬~3月、次が11月~12月中旬になります。逆に、植林地の侵入広葉樹を衰退させようとするならば、樹体内エネルギーが少ない6月~7月中旬までに伐採します。

柞の森のクサギはこれから、旺盛な枝葉の成長を止め、エネルギーを蓄積し、根を充実させ、来る冬と春に備えようとしています。

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柞の森の樹木たち その13 モウソウチク(タケ類) イネ科(タケ亜科)マダケ属
別名 江南竹、ワセ竹
漢字表記 孟宗竹

今年の冬は寒く、ぼんぼりは節分を過ぎても寒さが和らぎません。今年の春はだいぶ遅くなりそうです。春といえば、サクラ、そして、たけのこですが、今回登場するモウソウチクは、病気の母のために寒い中に筍を探して食べさせたという中国三国時代の賢者、孟宗に由来するものです。
ぼんぼりでは人工林の中に侵入する厄介者となっていて、皆さんの努力で最近は竹林らしい風情が戻ってきました。(写真①②③)

① ぼんぼりの孟宗竹の緑陰.jpg① ぼんぼりの孟宗竹の緑陰② 孟宗竹林.jpg② 孟宗竹林③ 棹部.jpg③ 棹部

1.よそ者?
モウソウチクの原産は中国江南地方、日本には唐から持ち込まれた801年説や宋から持ち込まれた1228年説がありますが元文3年(1738年)薩摩藩による琉球経由の移入によって全国に広まったとされています。今や、日本の原風景の一つになっているモウソウチクですが実は外来種なのです。モウソウチクは、比較的温暖湿潤な気候に育ち北海道の函館以南が生育地となっています。

2.タケは草?木?
さて、以前にもこの欄で書きましたがモウソウチクをはじめとするタケ類は木か草か?
 ○草の特徴  肥大成長しない、形成層がない、木質化しない、1年程度で枯れる。
 ○木の特徴  形成層があって幹や根が肥大成長をする、細胞壁が木質化して永年性。 
に対して
 ○タケは明瞭な茎の肥大が認められない、地上部は強固で木質化し永年性である。

タケは10mを超える「高木」になりますが、木には分類されません。このようにタケ類は木と草の両方の特徴をもっていることから木に近い草の仲間(イネ科)といえます。ぼんぼりでは木の仲間として扱うのが当然のような存在感があります。

イラスト② 小田原提灯.jpgイラスト② 小田原提灯イラスト① 筍の成長.jpgイラスト① 筍の成長3.雨後の筍
モウソウチクは、高さ20m 径20cmになるものもありうっそうとした竹林になります。この高さになるまで1ヶ月、2ヶ月目には成長が終わってそれ以降は伸びも太りもしません。わずか60日でこれほどの高さ太さになる驚異的な成長をする植物です。1日で120cm近く伸びた記憶もあります。
これは筍が突端にある成長点とそれぞれの節にある成長帯(イラスト①)の両方で伸びるからです。節は筍の時から出来ていて大きくなってもその数は変わりません。たとえば30ある節がそれぞれ5cm伸びたとすると合計では150cm伸びることになります。たたんだ「小田原ちょうちん」を伸ばすイメージです(イラスト②)。

そして、筍から若竹となって皮をおとすと高さや太さは変わらず硬くなります。その後の寿命は10年程度です。筍は、地中にあるうち節の全て(約60ともいわれる)が形成されていて、根のほうから順に伸びます。

筍の生長の源は地下茎です。タケ類の根は地下茎で節にひげ根があります。これが地中を這うように伸び、繁殖します。地下茎の節には芽(筍の素)があります竹林にはこの地下茎がファミリーごとに無数のネットワークとなって広がっています。

このように生命力のある地下茎で繁殖するので人工林の中の光が少ないところでも侵入して筍を出し、60日ぐらいの短期間で成長してスギなどの樹冠の上に出て光合成をするのです。床下から筍が出る話はよく聞きますが光がないところでも遠慮なく出ることが出来ます。
皮は筍を保護するだけでなくふしの成長を助ける働きがあるといわれています。
節間は、20~30cm、節から枝を2本ずつ出します。
葉は春に黄葉して新しい葉に入れ替わりますこのことを「竹の秋」といって俳句の季語になっています。

4.タケの年齢は
年輪ができないタケの年齢はどうして知ることができるでしょう。実は、竹の秋で葉が落葉することがタケの年齢を知る手がかりになります。タケは落葉するとき小枝を着けて落葉するので枝に跡を残します。その数を数えればいいのです。このほかに、筍の皮や竿の色、節にある白帯が黒くなると3年生などの方法があります。

5.タケの花
タケは60年に1度花が咲いて枯れるといわれていますがそれを証明する記録は数例しかなく完全に証明されたわけではありません。飢饉の時は米の代わりになるといわれていますがイネ科ですからそうかもしれません。私もササに実がなったのを何度か見たことがありますがとても米の代用になるような代物ではありませんでした。

6.タケの用途
タケは有用な植物で材質的にも優れものです。その筆頭はおいしい筍です。
タケは、竿の内部が空洞なので管の性質を持ちしなやかで強く、しかもそれを構成する繊維細胞は細長くこれも管状になっています。タケは、竿の大きさやその肉質部の厚さなどは力学的に合理的な構造になっているのです。だから、強風でもしなやかに受け流し20mの高さの竿を支えられます。しかし、管状の材は、引っ張りには強いのですが横からの力には管がつぶれるので弱い性質を持っています。節はこの円筒形の弱点を補強する役割があります。タケ類の中で、マダケは繊維が緻密で、柔軟性がありつやが優れているので加工用として重宝され、皮も利用度が高いタケです。モウソウチクは繊維が粗く材質は劣りますもっぱら筍の生産が目的です。

タケの用途で思いつくものを上げてみました。
○竿部は、竹細工、和風建築の壁素地、床材、矢来垣などの垣根、水管、樋、楽器、水筒、花瓶、爆竹、ざる、籠、竹ヒゴ・タケ串、傘、桶・樽のタガ、竹とんぼなどの玩具、竹馬、門松、燻しタケ、釣竿、物干し竿、すだれ、足場、燃料、竹炭、竹紙
○枝部は、竹箒など 
○皮は、肉、おにぎり、ちまき、羊羹など食物の包み、草履など

このほか竹酢液など利用法が多いものです。
伐採の適期は、晩秋からの冬の休眠期が材の耐久性が強くなります。
そしてこれほど有用なタケを使わなくなったのが今、里山で問題になっている放置竹林の原点なのです。筍は中国からの輸入物に取って代わられようとしています。

7.タケの分類
タケ類は成育型の違いから、タケ、ササ、バンブーに分かれます。
タケは気候が温暖で湿潤な地域にあり、ササは寒冷なところにも自生します。
では、タケとササとバンブーはどう違うのでしょうか。
 ○タケ・・・地下茎で繁殖する、タケの皮が生育後落下する、120年周期で開花
 ○ササ・・・地下茎で繁殖する、皮は成句後も着生している、40~60年周期で開花
 ○バンブー・・・地下茎は横に這わず分けつ繁殖し株立ちする
タケは大きくなりササは背が低いと思いがちですが外見では決められないものもあります。
タケの地下茎は横に這い伸びて節々から芽(筍)出すので普通の竹林に見られる散生した林になります。熱帯地方にあるバンブーは地下茎が横に這わずイネのように分けつによって増えますので株立ちの林になります。タケの種類は日本に150~600種あるといわれています。

8.タケノコ
筍は10日で成長するから「旬」に竹冠です。土壌が柔らかいとやわらかい筍がでるようですからぼんぼりは石礫が多いので余り柔らかいタケノコではないようです。タケノコはタケの種類によって味がだいぶ違います。マダケはすこし苦いのが特徴です。
それぞれに特徴があってどれもおいしくていろいろな料理法があります。私はシンプルにタケノコとグリーピースとの煮物が大好きです。今年のシーズンが待ち遠しい。

9.タケの思い出
イラスト③ どんど焼き.jpgイラスト③ どんど焼き①竹山の思い出
故郷の集落に共有の竹山がありました。そこは正月の「どんど焼き」用のタケを子供たちが取る場所でした。冬休み、集落中の小中学生男子がタケを切り出し川原に集めて「どんど焼き」の燃材山を造ります。1月15日にそれに大人たちが火をつけます。炎と火の粉が舞い上がり、タケが燃えるときにはじける音が山里の夜空に響く勇壮な行事でした(イラスト③)。その火で餅をあぶって持ち帰り、その年の家族の無病息災の祈りをこめたお雑煮を食べる習慣がありました。いつからかその習慣はなくなりましたが・・・
その竹山のタケは「コサンチク」で6月の梅雨のころずんぐりしたおいしいタケノコが出ます。これまた集落中で取りに来ます。また子供たちはここのタケで釣竿をつくりヤマメなどを釣りました。なるだけ真っ直ぐなタケを選び火であぶってより真っ直ぐにして色よく仕上げます。自分の作った竿を自慢しあったものです。

②竹かご職人
私の母方の祖父は何でも出来る人でしたが特に竹篭作りが得意だったようで冬になると集落を回り頼まれた竹かごを作っていました。このとき使っていた竹はマダケだったようです。
前掛けをかけて家の前にゴザを敷いて座り、いろいろな道具を使い皮をはぎ、タケを割り、竹ヒゴを作り、「しょいこ」やザル、ミノなどを作る姿を飽きずに見ていた記憶が残っています。そのときの祖父の穏やかな顔のしわまでもが甦って来るような記憶となっています。

③バンブーハウス
フィリピンで海外林業協力に従事した頃のことです。現場で調査をしてランチ時は近くのバランガイ(小集落)で弁当を食べます。バランガイには。タケ材で作った休憩所が必ずありましてよくそこで昼寝をさせてもらいました。屋根はコゴン(草)で葺き柱は潅木、床や壁は割りタケを編んだもので出来た簡易な小屋でしたが昼寝には快適でした。タケの香りが床下から吹いてくる涼しい風に混ざって吹いてきて癒される時間が持てました。目が覚めるとタオルケットがかけてあったのもうれしい心遣いでした。このタケはバンブーで地下茎は連軸型で株立ちして生えていました。また、バンブーシュート(タケノコ)もおいしかったように記録しています。

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