柞の森の樹木たち その12 イヌシデ(カバノキ科 クマシデ属 落葉高木)      
漢字表記 犬四手(紙垂)
別名 ソロシデ、ソロ、ソネ、ソヤ


① 柞の森のイヌシデの樹陰.jpg① 柞の森のイヌシデの樹陰2011年も師走を迎えましたがこの年は忘れられない年です。
3月11日の東日本大震災とその後の福島第原発事故、台風12号・15号の山地崩壊による被害、猛暑と災害の多い年となってしまいました。

被害を受けられた皆さまにお見舞いと、一刻も早い日常の生活が戻ることを切にお祈り申し上げます。

「2011年3月11日を忘れない!!」

今回取り上げる樹木は、このような祈りを込めて「イヌシデ」です。
イヌシデのシデとは、四手、紙垂のことで注連縄や玉串などにつける細長く切ったイナズマ型の紙のこと(イラスト)のことです。垂れさがる果穂がこの紙垂に似ていることが由来となっています。新しき年が平穏で安寧でありますように!!

しめ縄の紙垂(シデ).jpgしめ縄の紙垂(シデ)イヌシデの属するクマシデ属には、イヌシデのほかアカシデ、クマシデ、サワシバ、イワシデの5種があります。いずれも良く似ていますが比較的低地に多いのがイヌシデとアカシデ、寒冷な所に多いのがクマシデとサワシバ、低木で西日本の岩山や崖に生えるのがイワシデで、葉と樹皮にもそれぞれ特徴があります。 

イヌシデのイヌは一般的に役に立たないもの、劣るものに付いていますがイヌシデの場合、黄色の雄花序が犬に似ているという説もあるようです。そう言えばモコモコした姿が犬の尻尾に似ているようでもありますが?

樹木の中にはイヌのつくものがたくさんあります。思いつくままに挙げるとイヌザクラ、イヌツゲ、イヌビワ、イヌマキ、イヌガヤ、イヌガシ、イヌグス、イヌザンショウ、イヌブナ、イヌエンジュなどです。

③ イヌシデのねじれた樹姿.jpg③ イヌシデのねじれた樹姿② イヌシデの樹肌.jpg② イヌシデの樹肌柞の森のイヌシデは、炭窯跡付近の斜面でごく普通に見られます。樹高は20mぐらい、ここでは直径はあまり大きくないようですが普通は60cmぐらいになる木です。(写真①樹陰)

樹皮は、灰褐色、若木は平滑ですがやがて縦に割れ目が出来で凸凹になってきます。これはシデ類の特徴でヤマザクラやトチノキと同様にらせん木理があって幹をメッシュ状に太らせることで幹を折れ難くしているようです。(写真②③)。

葉は、側脈が12~15対で秋の紅葉は黄色くなります(写真④)。葉の裏に毛が多いのが特徴です。同じ場所に生えるアカシデは側脈の数が少なく、芽吹きと紅葉が赤くなるので見分けがつきます。側脈が12本以下であればアカシデ、15本以上はイヌシデですが、葉は環境に応じて変異がでるので要注意です。

⑤ シデの由来(紙垂).jpg⑤ シデの由来(紙垂)④ イヌシデの葉.jpg④ イヌシデの葉シデ類は見分けにくいのですが、側脈の数、生育場所、樹肌で見分けるのがポイントです。それぞれの特徴をあげておきます。
クマシデ:20~24対、樹皮がごつごつ
サワシバ:15~23対で沢筋に生育
アカシデ:7~5対、芽吹きや小枝が赤、紅葉も赤

花は風媒花で4、5月に芽の展開と同時に雄花は尾状に垂れます。
果実は、翼を持った果苞が房状になっていて、一対の翼は非対称になっており風に舞う時、様々な動きをして遠くに飛ぶ工夫をしているようで花苞の基部に2個の果実があります(写真⑤)

イヌシデの材の用途は、堅い材質を利用して工具や器具として使われますが、薪炭材としての利用が一般的です。また、シイタケのホダ木としても良質で、かつて、生産者から要望されてイヌシデをまとめてホダ木として販売したことがあります。

⑥ 熱烈歓迎 福持ってこい!!フクロウさん.jpg⑥ 熱烈歓迎 福持ってこい!!フクロウさんイヌシデの耐陰性は中程度、適応性が大きいのでコナラやクヌギとともに落葉広葉樹二次林のおもな構成樹種となりますがシデ類のぼう芽力はあまり強い方でなく主に天然下種で更新します。柞の森での伐採の際はこの点を考慮する必要があるようです。
ちなみに森の尾根筋の一画に地元のKさんがフクロウのための巣箱を架けた木はイヌシデです(写真⑥)。シデ(紙垂)が福郎さんを呼び寄せるかもしれません。

2011年は多難の年でしたが私にとって樹木医への挑戦で認定番号2001号を得た記念すべきで年でもありました。これも「柞の森の樹木たち」を書き始めたのがきっかけになっています。
これからもぼんぼりの皆さんの助けを借りながら精進しますのでよろしくお願いします。

皆さん、一年間のご愛顧ありがとうございました。新しき年の皆さまのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

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柞の森の樹木たち その11 アオダモ=ケアオダモ (モクセイ科 トネリコ属 落葉中高木)
漢字表記 青梻 
別名 コバノトネリコ、アオタゴ

①アオダモの緑陰.jpg①アオダモの緑陰君の名は?? 
柞の森の中央付近、古い炭窯のあるところはいろいろな樹種があって面白いところです。上方の岩場から崩れてきて石礫が溜まってガレ場状となったところですが、ミズメ、オニグルミ、ケヤキが良く生育しているところを見ると、昔は沢があったところで、それが崩石で沢が埋まったのではないかとおもわれ、地下には隠れ沢があるのかもしれません。炭窯を作った場所であることもそれを物語っています。

その1でオニグルミを植栽木と書きましたが、沢があったのであれば天然生でもおかしくありません(植えたにしては本数がすくないこともうなずけます)。そこに、調査を始めた頃から同定に悩んでいる樹種があります。その樹は、古い炭焼き窯の近くの歩道の傍に3本あります。3本とも胸高直径10~20cm程度、樹高は15m程度、樹皮は灰白色でスベスベしていて、葉は奇数羽状複葉です(写真①②)。周りにはこの樹の稚樹らしきものたくさん生えています(写真③)。初めて見たときからトネリコの仲間であることは判りましたが、これだと決めることが出来ず見るたびに悩んできました。前回は、決定的証拠を掴んだと思い「シオジ」と決めて終わりの会のとき自信たっぷりに発表しましたが、その後、やっぱり違うな・・・となりました。②アオダモの樹皮.jpg②アオダモの樹皮

モクセイ科トネリコ属は日本に9種あります。シマアオダモ、シマタゴ、シマトネリコ、トネリコ、ケアオダモ(アオダモ)、ヤマトアオダモ、ヤチダモ、シオジ、マルバアオダモです。ちなみに、ヒトツバタゴ(別名ナンジャモンジャ)は同じモクセイ科でもヒトツバタゴ属です。
このうち、シマの付く3種、寒冷なところに生えるヤチダモ、マルバの名のとおり鋸歯のない全縁の葉を持つマルバアオダモを除いたトネリコ、アオダモ、ヤマトアオダモ、シオジの4種のどれなのか迷っていました。

同定は科・属にあたりをつけて、主に葉の形、特徴で図鑑と比較しますが、葉は若齢、壮齢などの樹齢や生えている環境で固体差が現れて近縁の樹種の場合には決めかねる場合があります。葉の特徴のほかに、樹形や樹皮、地形、土壌条件、水分条件などの生えている環境が参考になりますがそれがまた迷いの種にもなります。

③アオダモの稚樹.jpg③アオダモの稚樹今回の場合は、一応はアオダモ(ケアオダモ)に決めていたのですが、アオダモにしては樹高と胸高直径が大きく、まだまだ大きくなりそうな雰囲気があること、沢が隠れていると思われること、シオジの生育地として知られる秩父地方に近いことなどからシオジがあってもおかしくないなーと考えていました。

前回の調査の時、竹で作った柿もぎに使う道具(写真⑥)を使い、採集した日がよく当たっている葉の、葉柄の付け根が大きく膨らんでいることを確認(写真⑤)したためシオジに間違いないと判断しました。しかし、シオジは比較的冷涼な山地の深い谷沿いに見られること、柞の森の場合、稚樹が多く発生いているが本来シオジは乾燥に弱く、柞の森は生育環境条件に合わないことから、改めて葉と樹皮を観察してアオダモに決めました。
前置きが長くなりましたが、同定に悩まされたアオダモの説明に入ります。

④奇数羽状複葉.jpg④奇数羽状複葉⑤アオダモの芽.jpg⑤アオダモの芽⑥葉を採集するのに作った竹製の道具.jpg⑥葉を採集するのに作った竹製の道具

イラスト 環孔材と柾目・板目.jpgイラスト 環孔材と柾目・板目バットの木
アオダモはケアオダモの変種ですがアオダモのほうが知られています。別名をコバノトネリコといいます。
アオダモが属するトネリコ属は、道管の分布が、年輪に沿って環状に配列する環孔材です。木目がはっきり表れる材でこのほかケヤキ、ナラ、キリ、ハリギリ(センノキ)などがあります。
道管は、水分の通路となる細胞です、針葉樹の場合、仮道管という単純な構造ですが、広葉樹は複雑な配列をする環孔材、散孔材(ブナ、ホオノキ)、放射孔材(カシ)があります。(イラスト参照)
今、ぼんぼりではイチョウのまな板を作っていますが、その際、柾目いう言葉が出てきますがイラストを参照ください。

アオダモの材は、強靭で粘りがあることから天秤棒や鍬、斧の柄、枝をねじって薪を縛るのに用いられたようです。和かんじきにも使われたようで、そういえば、小枝を曲げるとしなやかに曲がりQの字になってやっと折れるほどです。また、生木でも良く燃え、成長が遅いので木炭の材料としても優れていたようです。

今ではバットの木として名が知られ、主な産地は北海道です。資源が少なくなってきたので造林も盛んになりプロ野球選手も協力しているようです。直径16cm以上からバットに使われるようで、イチローのバットはアオダモ、松井はアメリカトネリコ(ホワイトアッシュ)のようです。ここのアオダモは立派なバットになれそうです。このほか、テニスやバトミントンのラケット枠、スキー板などの運動用具にも使われるようです。

DSC_2395 a.jpg⑦枝を水につけてみると…アオダモの特徴
アオダモの名は、雨上がりの樹皮が青緑色になることや枝を水につけておくと水が青い蛍光色になるが由来のようです。試しに枝を切って漬けたとこなるほど水が藍色気味になりました(写真⑦)。昔は青の染料に使われていたようで、アイヌは刺青をするときの消毒に使っていたようです

アオダモは、北海道から九州の山地に普通に見られる中高木で、一般的には、樹高は10m~15m程度で径級もそれほど大きくはなりませんが直立して曲がりや二股がない姿をしています。
他のトネリコ属に比べ乾燥に強く、斜面中部によく生育します。柞の森は、この生育条件をほぼ満たしています。ただ、耐陰性は強くないアオダモにしては稚樹をよく見かけるのは、炭焼で伐採が繰り返されて光が林内に入るようになって生えやすくなったのでしょう。
葉は、対生、小葉が5~7枚ある奇数羽状複葉で先端が鋭く尖り鋸歯も明瞭です(写真④)。
樹皮は青灰~褐灰色でホオノキに似た肌をして平滑です。褐色で縦に割れ目が出来るシオジとはこの点で明らかに違います。

花は春に雪のような白い円錐花序の小さな花をたくさんつけます。このような目立つ形態をしているのは虫を寄せるためで、シオジの風媒花と違い虫媒、風媒の両方を使っている知恵者です。この花が好まれ、最近は公園樹や庭木に良く植えられるようです。
種子は、なるべく子孫を遠くへ飛ばすためヘラ状の翼のある種子で10月ごろ実らせます。5年に1回ぐらい豊作の年がるようです。
このアオダモは、ボサ刈りをした盆堀川周辺の人工林の中でもみることができます。

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柞の森の樹木たち 番外編 2
眠りから目覚めたパイオニア

① 伐採前 2010.8撮影.jpg① 伐採前 2010.8撮影2ヶ月ぶりにぼんぼりの活動に参加しました。今回は柞の森の樹木たちの調査を始めたときから迷っていた樹種の同定に答えを出さなければなりません。

季節は初秋・晩夏?残暑が厳しい中、汗を大量にかきながら柞の森を歩きました。迷っていたのはシオジか?トネリコか?はたまたアオダモか?ですが、今回、梯子とある手作り武器を使って葉が採取できましたのでなんとか目的を達しました。このことについては次回に譲ることにして、柞の森を歩いていて気付いたことがりましたので今回は番外編として話題を登場させます。

伐採の効果発見!!
柞の森では昨年の暮れあたりから森の若返りのため広葉樹を伐採しています。
この森は昭和30年代まで炭焼きに利用された後、放置された40年~50年生のコナラやカエデの落葉広葉樹林ですが、アラカシなど常緑広葉樹が増え、やや暗い林となっていました。 (写真①)。ところが、写真②のように強い光が差し込む明るい林に変わって伐採の効果が出てきました。② 強い光が林内を射すように伐採後 2011.9撮影.jpg② 強い光が林内を射すように伐採後 2011.9撮影パイオニア(先駆)樹種の登場です。森の木は動けませんが森は時間軸に確実に動いている、遷移の始まりです。

今回の発見したのは炭窯の下の柞の道の脇です。ケヤキやアラカシが伐られギヤップができたところに集団で生えています。(写真③~⑦)
その集団は、アカメガシワ、ネムノキ、ヌルデ、カラスザンショウ、クサギでした。

パイオニアたちの力で森の再生
これらも柞の森の樹木たちとして本編でその実態を詳しく紹介することにしますが、今回は森の若返りの立役者として紹介します。
この付近にはこれらの樹木の母樹は見当たりません。それではこれらの樹木の種はどこから来たのでしょう。

ヌルデは50年以上休眠するそうですので、この森が盛んに伐られた頃に伐られた前生樹の種子とも考えられますが、林縁部や周りの森から鳥によって運ばれた種が何年も土の中で眠っていたと考えられます。

これらの種子は埋土種子といって、土の中で長い期間休眠し、光条件など発芽の条件が整えばそれに反応して発芽します。中には20年以上休眠する例もあるようですが5年や10年はじーっと森の環境が変わるのを待つことができるようです。

埋土種子は光の透過で土壌の温度が上昇して休眠を打破して発芽します。気温の日較差が10℃以上、35℃が数時間続くことが必要と言われています。柞の森は、上木が伐られ、ボサも刈られたことから光が差し込み土壌の温度が上がり発芽に至ったのでしょう。

③ パイオニア樹種  アカメガシワ.jpg③ パイオニア樹種  アカメガシワ④ ネムノキ.jpg④ ネムノキ⑤ ヌルデ.jpg⑤ ヌルデ⑥ カラスザンショウ.jpg⑥ カラスザンショウ⑦ クサギ.jpg⑦ クサギ

森林の土壌にはこのような埋土種子が豊富で1平方メートル当たり40~700個もあるそうです。森林土壌はシードバンクと呼ばれ、森の自然修復力、森林生態系の潜在能力の源になっています。この力を利用して森林の表土を荒廃地に播き自然生態系を配慮した緑化の方法があります。

パイオニア樹種は発芽すると成長が早く、新しい芽を次々に展開し周りに優先して育ち、一時期、森の主役になりますが20年ぐらいで他の日陰でも育つ樹種に変わっていきます。

パイオニアたちには、森の環境の変化をいち早く感じて自己主張して先頭切って生きていく気概が感じられます。
柞の森のパイオニアたちはまだ小さくて目覚めたばかりですがこれらの森のダイナミックな動きの始まりを教えてくれます。

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柞の森の樹木たち その10  ミズキ(ミズキ科 落葉高木)
漢字表記  水木
別名    クルマミズ、ダンゴノキ、マイダマノキ、トリアシ、ミズクサ、ミズシなど

① 網目模様が出ている柞の森のミズキの樹幹.jpg① 網目模様が出ている柞の森のミズキの樹幹暑かった夏もようやく秋の気配、今年の夏は節電もあって特に暑い夏でした。結局、我が家はエアコンを使わずに過ごしてしまいました。

盆堀は虫の音が聞けるようになっていると思います。
私の通勤路ではミズキの実が黒く熟れ始めました。
柞の森のオオバジャノヒゲの群落のある炭窯跡周辺にミズキが3本ほど生えています。この木は北海道から九州まで、相当古くから分布していたようで天然林、二次林のどこでも見ることが出来ます。柞の森では、それほど大きい木はありませんがスギ人工林の中に幼木が生えているのを見ることが出来ます。

ミズキは水木が由来です。名前のとおり水気の多い木で、春先枝を切ると水が滴り落ちるのでこの木を家の材料に使うと水を吹き火事よけになるとする地方もあります。名前のとおり谷沿いの凹地形湿り気の多いところを好んで育ちます。
大きなものは40年生で樹高15~20m、直径は50cm程度になりますが柞の森のミズキの樹高は10mぐらいで径も20cm以下です。(写真①②)
② 柞の森のミズキの樹冠.jpg② 柞の森のミズキの樹冠今回は、柞の森のミズキは背が高く写真に納め難いので他の地域の写真も使いました。

ミズキの枝ぶりと日本の風習
ミズキの特徴は何といっても枝ぶり(樹形)です。
それは枝が幹から輪生に、そして階段状に水平に展開するので横に広がった格好で目立ちます。(写真③)
樹木の芽には頂芽と側芽があります。針葉樹やトチノキなどは頂芽が優勢するので頂芽はそのまま主軸として生長し木は上へ上へと伸びすらりとした円錐形になります(主軸分枝)。

一方、広葉樹の多くは頂芽より側芽からの枝がつねに勢いが良い仮軸分枝です。 
ミズキの場合はやや特殊で、頂芽からの枝の成長はすぐ止まり、側芽が成長を始め、その成長が上向きになって止まると、また次の側芽が伸長を始める、これが3次~5次と繰り返されて波うった階段状の枝ぶりになります。

③ 横へ伸びて波うつような枝(山梨県南アルプス市で撮影).jpg③ 横へ伸びて波うつような枝(山梨県南アルプス市で撮影)これの枝ぶりを利用してある伝統行事に使う地方があります。
それは餅花あるいはマユダマと呼ばれる小正月(1月15日)に、丸めた餅を枝に付けて神棚や神社に飾る風習です。日本各地にあり、その地方によって多少の違いがあり、京都や花餅と呼ぶ飛騨・高山地方が有名です。東日本一帯ではマユダマと呼ばれています。

わが故郷、熊本県葦北町ではミズキの代わりにネコヤナギ(カワヤナギと呼んでいた)の枝を切って搗きたての丸めた餅を切った枝に刺し、餅に切り取った枝を挿すやりかたで造ります。この餅刺しは子供たちがそれを受け持っていました。白と食紅を入れた赤、ヨモギを入れた緑の餅とネコヤナギの可愛い花穂でまるで花が咲いたようなものになり、花がない季節の神様へのお供えができます。それを観音堂、山の神、水神様などの祠にお供えに行くのも子供たちの役目でした。その日が1月15日だったか旧正月だったか記憶が薄れているのですがネコヤナギの芽が少し膨らんでいたのできっと旧正月だった思います。ちなみに平成24年の旧正月は2月10日です。故郷の柳餅を思い出してイラストにしてみました(下手なイラスト)。

この餅は1週間ほどして堅くなったものを焼いてぜんざいや雑煮にして食べました。美味しかったのを覚えています。群馬県みなかみ町藤原ではミズキに餅を飾り餅花にするそうです。
横に波打つような枝と葉が落ちると枝が赤くサンゴのようになるミズキが選ばれたのが分かるような気がします。ネコヤナギも横に伸び枝は少し赤くなります。今ではあまりやらないようですがこのような風習は残しておきたいものです。ミズキの別名のダンゴノキやマイダマノキはこの風習に由来するものでしょう。

ミズキの樹皮は、直径10cmぐらいから樹皮に亀裂ができ、成長するに従い網目模様になります(写真①)。

故郷の旧正月の餅花.jpg故郷の旧正月の餅花④ ミズキの平行脈 破って引っ張ると….jpg④ ミズキの平行脈 破って引っ張ると…⑤ヤマボウシ(江東区新木場).jpg⑤ヤマボウシ(江東区新木場)

葉脈
葉はミズキ科の特徴である大きな側脈が平行に走っています(写真④)。同じ仲間であるヤマボウシ(写真⑤)や、ハナミズキも同じで葉っぱを写真④のように引っ張ると葉脈の中の維管束が筋のように引き出されます。葉脈の中まで水と養分が流れていることを知ることが出来る樹木です。また、ミズキの落葉は分解速度が速いといわれていますので土壌形成にいい葉といえます。ミズキの葉は、民間療養では腫れを抑える用途に使うそうです。

⑥ミズキの花(5月 江東区新木場).jpg⑥ミズキの花(5月 江東区新木場)花は雲海
花は、虫媒花で開花は5月、雲海のような白い花をつけます(写真⑥)。実が成熟するのは8月、黒い実で目立ちます。ヒヨドリが好んで食べ鳥散布されますがツキノワグマも好んで食べるそうです(写真⑦)。 

果肉を剥いてみると硬い種子があります。これが鳥の消化器官で消化されないで方々にミズキが生えてくるのでしょう。また、ミズキの種子は土壌中で保存が利き埋土種子バンクとなります。苗木を作る場合は取り播きが良く採取の翌々年に発芽します。

材はこけし美人
ミズキの材は、散孔材で辺材と心材の区別がなく、年輪が不明瞭で色は白~淡黄色なのでコケシの材料に使われます。鳴子、草津、伊香保などが有名です。このほか玩具のコマや寄せ木細工、曲木細工、印鑑などに使われます。果実は潤滑油や石鹸の材料にするそうです。

⑦ ミズキの果実(8月下旬 江東区新木場).jpg⑦ ミズキの果実(8月下旬 江東区新木場)ミズキは花と樹形が美しいので庭木に良く植えられますがなんといってもアメリカハナミズキがそのネーミングからも好まれます。アメリカハナミズキがソメイヨシノとの交換で日米親善に貢献している話は有名ですのでここでは省きます。

ミズキの実は熟れると黒くなりますが、樹木の果実は赤くなるものと黒くなるものがありますがなぜこの色になるのか?については今回も長くなりましたのでまたの機会に。

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柞の森の樹木たち その9   アブラチャン(クスノキ科クロモジ属、落葉広葉樹)
漢字表記 油癧青       別名 ムラダチ、イヌムラダチ、ジシャ  

① エゾハルゼミの羽化.jpg① エゾハルゼミの羽化この季節、ぼんぼり周辺ではアブラゼミが鳴いているのではないでしょうか?今年は蝉の鳴き声が少ないように感じます。春先の低温の影響といわれているようですがどうでしょう?7月の活動日に杉林を歩いたらヒグラシが何匹も鳴いて飛び立ちました。

蝉の鳴き声は「夏休み」と重なります。
夕方のヒグラシのキョナ・キョナ・キョナの声に今日もナ、一日よく遊べたと満足しアブラゼミの暑苦しいジージーシーの中で夏休みはまだまだあるぞーと安心し、ツクツクボウシのジュクーシ・ジュクーシ・ジー・チョイスチョイスの声が「シュクダイ・ノコシ」に聞こえ、ああ~夏休みも終わるなーとため息をつくあの、あぶらっぽい夏休みはもうない。

わが故郷ではツクツクボウシのことをその鳴き声から「ジュクシ」と呼んでいました。
ところで、蝉はたった7日の寿命と言われますが、その前に地中で7年間も生きているのですから昆虫としては長寿となるのでしょうね。写真①は奥利根で見つけたエゾハルゼミと思われるセミの羽化です。きれいな緑色の葉根が神秘的でした。思わず「長い間暗い土の中でご苦労様でした。短い夏を楽しんで・・」と声をかけました。

なんだか似合わない書き出しになりましたが、盛夏の中、今回紹介するアブラチャンからアブラゼミを連想してしまいました。

柞の森では炭窯跡のオオバジャノヒゲ(同コーナーの草花を参照)の群落の付近に何本かあります。(写真②③) スギの人工林の中にも株立ちしているのを見ることが出来ます。林内の下層から中層にある小高木です。大きくなってもせいぜい5m程度でしょう。

アブラチャンの名は、アブラは油、チャンは瀝青でタールやピッチなどのことです。「油瀝青・アブラチャン」ということで油が多い木が由来です。アブラの名が付いた木はほかにアブラギリ、コシアブラ、アブラスギなどがあり、やはり油分が多いか油の香りがします。アブラチャンも名前のとおり、樹皮や種子を絞り、灯油として利用し、この油をアブラチャンと呼んだようです。

② アブラチャンの葉.jpg② アブラチャンの葉③アブラチャンの幹.jpg③ アブラチャンの幹④アブラチャンの実(7月上旬撮影).jpg④アブラチャンの実(7月上旬撮影)

クスノキ科、クロモジ属ですので特有の香りがします。葉っぱを取ってすこし揉んで嗅いで見てください。スーとした芳香に癒されます。今頃は青いつやつやの比較的大きな実が実っていて傷を付けると油っぽい芳香が漂います。(写真④)
林の下層に育ち、半日陰の湿っぽいところが適地ですが、樹下でないところでは旺盛に株立ちしています。株立ちするということは萌芽しやすいということです。

写真⑤はみなかみ町のアブラチャンですが別の樹種かと思うぐらいの姿でした。
葉は、互生で表面が照葉樹のようにテカテカし裏は灰白色、楕円形をしていて葉柄が赤っぽくなっているのが特徴です。(写真⑥)
樹皮は茶褐色から黒褐色です。花は淡黄色の小さな花を散形状に付けるダンコウバイの花に似ています。
この木は生木でも良く燃える木で、薪材として使われたようです。また、粘り強く曲げやすいのでみなかみ町藤原では和カンジキ(写真⑦)の材料として使われています。

⑤日当てのアブラチャン.jpg⑤日当てのアブラチャン⑥ 葉柄が赤みを帯びる.jpg⑥ 葉柄が赤みを帯びる⑦和カンジキ.jpg⑦和カンジキ

今回は暑い夏にふさわしいアブラチャンでした。

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