柞の森の樹木たち その18 冬芽観察

【活動報告】 芽は葉ほどに・・・・ 冬(ふゆ)芽(め)観察

午前中のシイタケ原木の玉伐りの疲れを足と腰に残しながら、午後はかねてより楽しみにしていた冬芽の観察を行うことにした。

同行してくれるのは「平成のかしまし娘」と名付けた、O、A、Kさんに久しぶりに元気な顔を見せてくれたNちゃんの女性4人。
相手が女性なので気を使い得意の○○ネタは封印して品格に心掛けた。

「厳しさに 備えし 知恵の 冬芽かな」

写真2        冬には葉を黄色くする街のマテバシイ .jpg写真2 冬には葉を黄色くする街のマテバシイ 写真1       スギ葉の赤変.jpg写真1 スギ葉の赤変樹木は厳しい冬の気候を乗り切るため様々な知恵を持っています。
落葉樹が葉をおとし、常緑樹も葉の色を変えます。街路樹のマテバシイやタブが葉を黄色くさせ、スギは葉を赤くさせ、写真(1,2)落葉樹の中には樹体内の糖分を増やし不凍液にして生育に適さない冬の期間の対策をします。冬に木を伐ると香りが高いのがそれを表しています。この時季、見た目は生気がないように見えますが、内側には昨年のエネルギーを蓄えた充実した樹体で厳しい寒さを乗切り、春に新たな成長を始めるための「耐えるたくましい姿」なのです。なんだか出産前のお母さんの逞しさに思えます。

その典型的なのが冬芽です。冬芽にはその樹木の種類の特徴がよく出ていて、葉で名前を知るよりもわかりやすい場合があります。ある人は「冬芽は、化粧を落とした寝顔」と表現しています。冬芽はスッピンなので本当の姿がわかるのです。

写真3 粘液を持ったトチノキの芽.jpg写真3 粘液を持ったトチノキの芽冬芽は、冬の期間を休眠して過ごす休眠芽で、冬の寒さや乾燥から春に成長すべき生長点を様々な工夫で守るようにできています。幼い赤ちゃんを守る「シェルター」ともいえます。そのシェルターのひとつに鱗(りん)芽(が)と言われる重ね衣があります。ブナは20枚ほどの重ね衣をしている「十二単衣の色白な美人」なのです。ブナ、コナラ、ヤマザクラなどが持っている鱗芽にはジャンパーのように硬いもの、毛皮のコートのようなものを覆っているものなど樹種が生育する気候によって違いが出ています。針のような赤い芽、白い芽、いじけた様な芽など鱗芽もいろいろで見ていて飽きません。オニグルミ、アカメガシワ、クサギなど暖かい地方の出身に多い裸(ら)芽(が)、ネムノキなどは芽を隠している隠(いん)芽(が)で冬を過ごします。このほか、ハンノキやトチノキは鱗芽に加えて芽をべとつくワックスや粘液(不凍液)で覆って乾燥を防いでいます(写真3)。冬芽には葉の組織が詰まっている葉芽(ようが)と花になる花(はな)芽(め)と両方が入っている混(こん)芽(が)があります。冬芽を見ていると春に咲く花と燃えるような若葉が想像されます。そうです冬芽には「希望」が詰まっている「命のカプセル」ともいえるのです。

冬芽と葉痕.jpg冬芽と葉痕もうひとつ冬芽観察の楽しみは葉(よう)痕(こん)です。葉痕は葉が落ちた痕で、維管束(いかんそく)(養分・水分の通り道)痕の数や配列で動物や人の顔に見えてとても面白いものがあります。
冬は自然観察には不向きだと思われがちですがなかなかどうしてスッピンの森や樹木には冬芽のように豊かな表情がありとても楽しいものになります。「芽は葉ほどにものを言う」です。きっと目が離せなくなるでしょう(冬芽と葉痕のイラスト参照)。

今回の、冬芽観察の同行者は、ダジャレにもよく反応してくれました。おつきあいありがとうございました。
昨年の秋に実ったサネカズラ(実葛/美男葛)とアオキの赤い実、ヤブツバキの大きな赤い花が残っていて色の少ない森で自己主張していたのも印象的でした(写真4,5)。
ヤブツバキは、前回見たときは蕾がたくさん見られたので楽しみにしていたのですが、今回はなぜか少なくなっていました。今年は冬が厳しくエサが少ないので、ヒヨドリなどが開花前に失敬したのかもしれません(写真6)。

今回の冬芽観察で見つけたダンコウバイ(写真7)は、葉を見ていた時にはアオモジと思っていたのですが今回、ダンコウバイと分かったのは冬芽だからわかったことです。
写真4 アオキ.jpg写真4 アオキ写真5 サネカズラ.jpg写真5 サネカズラ写真6 ヤブツバキ.jpg写真6 ヤブツバキ写真7        ダンコウバイ花芽.jpg写真7 ダンコウバイ花芽

この時、四人の同行者に、「シロモジという木はない」と断言しましたが…
間違っていました「STAP細胞(いやシロモジ)はあります!!」、ごめんなさい!

今回は次の樹種の冬芽が見られました。全部の写真はありませんがその特徴をあげておきます(写真8~32)。
タラノキ、アブラチャン、クサギ、ホオノキ、キリ、サンショウ、ジャケツイバラ、ホソバタブ、リヨウブ、ミツバアケビ、ニワトコ、ダンコウバイ、ヤブムラサキ、ミズキ、ゴンズイ、アオハダ、ウワミズザクラ、タカノツメ、クズ、コナラ、アカメガシワ、エゴノキ、ウリノキ、クリ、ヤシャブシ、イヌブナ、ヌルデ、ヤマザクラ。
写真8        タラノキの頂芽・側芽と大きな葉痕.jpg写真8 タラノキの頂芽・側芽と大きな葉痕写真9          アブラチャンの  花芽と葉芽.jpg写真9 アブラチャンの花芽と葉芽写真10 毛が密生するクサギ頂芽と  葉痕(裸芽).jpg写真10 毛が密生するクサギ頂芽と葉痕(裸芽)写真11       つんと空に突き出すホウノキの大きな 頂芽.jpg写真11 つんと空に突き出すホウノキの大きな頂芽

写真12       ハート形のホウノキの葉痕.jpg写真12 ハート形のホウノキの葉痕写真13        サンショウ.jpg写真13 サンショウ写真14        常緑樹も冬芽で  ホソバタブ.jpg写真14 常緑樹も冬芽でホソバタブ写真15 リョウブ.jpg写真15 リョウブ写真16        ミツバアケビ.jpg写真16 ミツバアケビ

写真17        ニワトコ.jpg写真17 ニワトコ写真18       ダンコウバイ花芽と葉芽.jpg写真18 ダンコウバイ花芽と葉芽写真19       バルタン星人の手?ヤブムラサキの頂芽.jpg写真19       バルタン星人の手?ヤブムラサキの頂芽写真20 ゴンズイ.jpg写真20 ゴンズイ写真21       アオハダ短枝の冬芽.jpg写真21 アオハダ短枝の冬芽

写真22 ミズキ.jpg写真22 ミズキ写真23 落枝痕の上にチョンと載った ウワミズザクラの側芽.jpg写真23 落枝痕の上にチョンと載ったウワミズザクラの側芽写真24        タカノツメ頂芽.jpg写真24 タカノツメ頂芽写真25        タカノツメ側芽.jpg写真25 タカノツメ側芽写真26     変顔のクズ葉痕.jpg写真26 変顔のクズ葉痕

写真27       怒っているクズ葉痕.jpg写真27 怒っているクズ葉痕写真28       変顔クズ葉痕.jpg写真28 変顔クズ葉痕写真29       仏様の顔のクズ葉痕.jpg写真29 仏様の顔のクズ葉痕写真30 クリ.jpg写真30 クリ写真31       ヤマザクラ.jpg写真31 ヤマザクラ

写真32 押しくらまんじゅうをするコナラ冬芽.jpg写真32 押しくらまんじゅうをするコナラ冬芽写真33       春を待つ冬芽達.jpg写真33 春を待つ冬芽達これらの冬芽は、今私の部屋で少しずつ膨らんでいます。
どんな葉(希望)が見られるのか楽しみです(写真33)。

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